鍼灸について
鍼灸治療が効果を示す症状の多くは、運動器系に起因するものが多く、したがって受療者の多くは腰下肢痛、膝痛、頚肩腹痛が占めています。
一方で鍼灸治療は健康維持増進に寄与すると言われ、東洋医学でいうところの「未病治」の概念に基づく治療手技が古くから行われています。
いまだ症状の改善、病気の治療、予防に関する鍼灸の効果については一定の見解を得ていないので現状です。
鍼には、ハリ麻酔のような鎮痛作用、自律神経の調整による内臓の活性化、免疫作用を高めるなど、病気から身体を守る数々の効果があります。
これらの効果の解明はまだ十分ではありませんが、多くの医学者や医療機関で科学的に研究されております。
あるツボに鍼をすると、その刺激は脊髄から大脳皮質に伝わり、神経・血管・リンパ系を介して痛みなどを調整し、身体を安定した状態に改善しています。(エンドルフィン効果・抗ヒスタミン効果など)
また、鍼刺激を与えることにより、局所又は漸進の血液循環を良くし、痛みをおこさせる物質(ヒスタミン、プラディギニン類等)の局所濃度を低下させ、栄養分に営む新鮮な血液を供給することにより、痛みを和らげる作用もあります。
鍼治療のメカニズム
鍼をもって身体表面の一定部位に、接触または穿刺、刺入し、生体に一定の機械的刺激を与え、それによって起こる効果的な生体反応を利用し、生活機能の変調を矯正し、予防または治療に広く応用する施術です。
鍼治療を行うと身体では何が起こるかというと・・・
・鎮痛系の賦活
・血行促進
・体性-内臓反射
・体性-自律神経反射
・免疫系の活性化
などがあげられます。
難しい言葉が出てきましたが、まとめると、
血行を促す、痛みを抑える、自律神経に作用して内臓、血圧、免疫系に働きかけるなどの効果が挙げられます。
東洋医学の治療は自然治癒力を高める治療です。
患者様の中には、何十年も東洋医学の治療に通われている方がいます。
それは、症状が治らないからではなく、治療を受けると自然治癒力が増すので、体の調子が良い状態が保持できるからです。
こうてん反応について
治療後一時的に色々な症状が出てくることがあります。これを東洋医学では瞑眩(めいげん)といいます。
これは鍼が身体に合わないのではなく、回復現象です。心配せずに続けてください。多くの場合、半日~1日で治まります。
また急性の症状や、まだ日の浅い症状は比較的少ない回数で改善しますが、慢性の症状(長年わずらっている症状)は根気よく治療する事が必要です。
こんな症状に効果があります。
鍼灸の適用例(有効な病気)
米国国立衛生研究所(NIH)合意形成声明によると
「成人の術後や薬物療養時の吐き気、嘔吐、および歯科の術後痛に鍼が有効であるという有望な結果が得られている。また、薬物中毒、脳卒中のリハビリ、頭痛、月経痛、テニス肘、線維性筋痛、筋筋膜性疼痛、変形性関節炎、腰痛、手根管症候群、喘息などに対しては、補助的ないしは代替的治療法として、あるいは総合的な管理計画の中に含めて、鍼を利用すれば役立つ可能性がある。」(以上抜粋)と述べられています。
つまり、身体に起こる痛みに対して鍼治療が有効であるという多くの研究結果が報告されています。
WHO(世界保健機関)で鍼灸療法の有効性を認めた病気は、次のものを挙げています。
【神経系疾患】
神経痛 ・ 神経麻痺 ・ 痙攣 ・ 脳卒中後遺症 ・ 自律神経失調症 ・ 頭痛 ・ めまい ・ 不眠 ・ 神経症 ・ ノイローゼ ・ヒステリー
【運動器系疾患】
関節炎 ・ ◎リウマチ ・ ◎頚肩腕症候群 ・ ◎五十肩 ・ 腱鞘炎 ・ ◎腰痛 ・ 外傷性の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
【循環器系疾患】
心臓神経症 ・ 動脈硬化症 ・ 高血圧低血圧症 ・ 動悸 ・ 息切れ
【呼吸器系疾患】
気管支炎 ・ 喘息 ・ 風邪および予防
【消化器系疾患】
胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘) ・ 胆嚢炎 ・ 肝機能障害 ・ 胃十二指腸潰瘍 ・ 痔疾
【代謝分泌系疾患】
バセドウ氏病 ・ 糖尿病 ・ 痛風 ・ 脚気 ・ 貧血
【生殖、泌尿器系疾患】
膀胱炎 ・ 尿道炎 ・ 性機能障害 ・ 尿閉 ・ 腎炎 ・ 前立腺肥大 ・ 陰萎
【婦人科系疾患】
更年期障害 ・ 乳腺炎 ・ 白帯下 ・ 生理痛 ・ 月経不順 ・ 冷え性 ・ 血の道 ・ 不妊
【耳鼻咽喉科系疾患】
中耳炎 ・ 耳鳴 ・ 難聴 ・ メニエル氏病 ・ 鼻出血 ・ 鼻炎 ・ ちくのう ・ 咽喉頭炎 ・ へんとう炎
【眼科系疾患】
眼精疲労 ・ 仮性近視 ・ 結膜炎 ・ 疲れ目 ・ かすみ目 ・ ものもらい
【小児科疾患】
小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠) ・ 小児喘息 ・ アレルギー性湿疹 ・ 耳下腺炎 ・ 夜尿症 ・ 虚弱体質の改善
上記疾患のうち「◎神経痛・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎五十肩・◎腰痛・◎頚椎捻挫後遺症」は日本国においては、鍼灸の健康保険の適用が認められています。
使用する鍼について
鍼の太さも 症状や場所において太いものから極細まで変えていきます。
鍼灸で使用する鍼は、直径が髪の毛程度のステンレス製の0.2mm以下の細い鍼で、先端も注射針とは異なり痛みを伴わない形状にしており、皮膚のごく浅い部分に刺して施術しますので、ほとんど痛みを感じることはなく、出血もしません。
当院では、全て使い捨て鍼(ディスポーザブル鍼)を使用しています。鍼を置いておく鍼皿も全て消毒滅菌されて梱包されており、一回ごとに全て廃棄し、衛生管理を徹底しております。
経穴(ツボ)や筋肉が硬くなっている箇所などに刺入します。刺入方法は、主に管鍼法と言って円形の金属或いは、合成樹脂製の筒を用いて刺入します。経穴(ツポ)に刺入した鍼は一定の刺激(鍼を上下したり回旋、振動させたりします。)を加え直ぐに抜く方法と、10~20分間置いておく方法があります。(置鍼法)
また、刺入した鍼に、微弱な低周波パルス通電をする場合もあり、痛みの抑制や筋肉のこり、血液循環の促進に効果があります。
その他、刺入せずに皮膚に抵触させたり押圧させたりする方法もあり、小児鍼として乳幼児の夜尿症、夜泣きなどに効果があります。
小児鍼について
生後1カ月の赤ちゃんから施術可能です。日本では江戸時代から「小児はり」という治療法があり、お子さんの疳の虫(かんのむし)の治療や健康管理に使われてきました。器具については大人が使用するものとは異なり、『カッサ』という言葉はご存じでしょうか?さすったりこすったりする鍼といえどもポール型やバチ型、熊手型など小さなお子様が遊びながら安心して受けられる道具です。大半のお子様のご両親は、こんなことで治るなら早く来ればよかったと好評です。当院ではぜんそく・中耳炎・かぜ・夜泣きで多くのお子様の施術をしております。
お灸について
”お灸をすえる”とは「お仕置き」の意味でよく使われている言葉になっていますが、江戸時代の俳人松尾芭蕉の「奥の細道」の中に出てくる「三里の灸」はあまりにも有名です。このように三里の灸は昔から万病、特に胃腸病に効くツボとして慣れ親しまれております。
また、小児疳虫の「チリゲの灸」や面疔のときの「合谷の灸」も有名です。
灸の施術は、艾(もぐさ)を用いて経穴(ツボ)に熱刺激を加える方法で一般的に「やいと、お灸」と言われております。その方法は、艾を直接皮膚上に乗せて着火させる直接灸と艾と皮膚の間を空けて行う間接灸とに大別されます。
直接灸の艾の大きさは糸状、米粒大の細いものから、小指大のものまであります。施灸後は、皮膚に水泡が出来たり灸痕が残りますので予めご承知置き下さい。
間接灸は、艾と皮膚の間に空間を作ったり、味噌、薄く切った生姜・にんにくなどの熱の緩衝材を入れてするお灸です。
最近のお灸は皮膚に直接もぐさを置かず、円柱状の筒の上でもぐさを燃やす、いわゆる≪温灸≫に近いものが主流になっています。
その為、ほとんど跡も残らず、熱いと感じるのもほんの20秒くらいのものや、一定温度のものです。
心配な方は、一度実物を見てもらえば、安心して頂けると思います。
お灸の効果
1.お灸にはチネオールと呼ばれる独特の成分が含まれていて、人の体の腫れや痛みなどの炎症を和らげたり、血液の循環を良くしたり、更には自律神経などに作用して、内臓の働きを助けたり、神経の興奮を鎮めたりします。
2.お灸の熱がツボを刺激し、体内の気と血行を良くし、冷え性、肩こり、腰痛、内科疾患、産婦人科疾患に効果があります。
3.お灸の温熱効果により体内が温められ、体力増強、体質改善になり、虚弱体質、慢性疾患、に効果があります。
4.お灸の刺激は人間の免疫力を高め、病気の予防、健康の増進に役立ちます。